しかし、ここで僕は疑問を持った。以前、果実酒用と書かれた紙パック入りのワインをスーパーで見かけたことがあるからである。
また、検束をかけたら、果実酒用のワインというものが確かに存在することがわかった。
これはどういうことなのだろう。
まずは酒税法施行令を引用してみる。
酒税法施行令第五十条
10 法第四十三条第九項に該当する混和は、次の各号に掲げる事項に該当して行われる
ものとする。
一 当該混和前の酒類は、アルコール分が二十度以上のもの(酒類の製造場から移出され
たことにより酒税が納付された、若しくは納付されるべき又は保税地域から引き取られた
ことにより酒税が納付された、若しくは納付されるべき若しくは徴収された、若しくは徴
収されるべきものに限る。)であること。
二 酒類と混和をする物品は、糖類、梅その他大蔵省令で定めるものであること。
三 混和後新たにアルコール分が一度以上の発酵がないものであること。
つまり、無許可でアルコール分20度未満の酒に梅などを混和して新たな酒を作り出すことは許されないのである。
また、混ぜたあと発酵して度数が1%以上増えてしまうのも許されない。
ワインは度数が20%未満なので、梅などを混ぜることは許されないのである。逆に言えば、20%を超えるならば許されることになる。
果実酒用として販売されているワインの度数は23%であった。全く問題はない。と言うか、法に触れないように23%にしたのであろう。
市販されているごく普通のワインで梅酒を作ることは許されないが、果実酒用のワインで作ることは許されるのである。
ただ、酒税法や施行令には大きな問題があると思う。20度以上という基準は、20度以上あると再発酵のおそれがないかららしい。
しかし、なぜ、一般人が家庭で梅酒を作ることが制限されているのだろうか?どぶろくなどもそうなのだが、売り物にするなら別として、個人が自分で飲むために作るのがなぜいけないのだろうか。
しかも、梅酒の場合はどぶろくのようにゼロから酒を造るのではなく、再発酵によって度数が数%上がるだけなのである。
20%未満の酒で梅酒を作ることは許されるべきなのではないかと思う。
朝日新聞は記事を訂正したらしいが、それだけではなく、果実酒用のワインが発売されていることや、なぜ梅酒を作ることが規制されているのかなどを掘り下げた記事を書くべきではないだろうか。
梅酒を作る楽しみを記事にしたのだから、それが規制されて、その楽しみが奪われていることまでフォローするべきであろう。
調べていくと果実酒用の清酒もあるようだ。こちらも勿論、20%以上である。また、果実酒用のブランデーも売られている。
売られている梅酒も多種多様である。日本酒ベースの梅酒、純米酒ベースの梅酒、ブランデーべースのもの、乙類焼酎でつけたものなど、あげ出すときりがない。
また、氷砂糖ではなく、黒糖を使ったもの、はちみつを使ったものもある。
梅酒の世界もかなり奥深そうである。
日本酒ベースの梅酒等の具体的な製品について興味のある人は、『果実酒用のワイン・日本酒(その2)』という文章にまとめてあるので、そちらも参照してみてください。